【学歴別】司法試験の合格に必要な勉強時間・年数は?【73期司法修習生82人に聞いた】

司法試験の勉強は質×量です。
質を高めて短期間合格を目指そう」と考えるのも結構です。しかし、合格に必要な【量】を甘く見てはいけません
今回は、2019年の司法試験合格者の方々を中心とした73期司法修習生82人に回答していただいたアンケート結果をもとに、「司法試験の合格に必要な勉強時間・年数」について、分析しました。
結果を踏まえて、学習の参考にしていただければ幸いです。

目次

はじめに:司法試験合格に必要な【質】と【量】を正確に把握し、効率的な学習計画を立てよう!

今回のアンケート結果は、おそらく世間一般で思われているよりシビアです。一方で、合格者の方からすると、ある程度「そうだよな…!」と合点する結果ではないでしょうか。

結論から先に言いますと、司法試験合格に求められる学習能力(質)や、勉強時間(量)は高いです。

具体的には、世間一般に言われる高学歴以上であることを前提に、合格までにかかった平均勉強時間は8720時間平均年数は5.35年です。

仮に、大学まで勉強をさほどしてこず、勉強慣れしていない方であれば、どんなに少なめに見積もっても10000時間以上の勉強時間が優にかかるでしょう。

また、受験指導校の入門・基礎講座を受講したからと言って、勉強時間・年数が短くなるとは言えません

アンケート結果をもとに、自分に必要と思われる勉強時間・年数を逆算し、勉強計画をブラッシュアップして、より効率的な学習をしていただければ幸いです!

以下では、アンケート結果を用いた根拠や、アンケート結果の信用性(必ずしも高くないです…!)について、詳述しますね。

今回利用したアンケートについて

2019年の司法試験後に、司法試験合格者のライングループが作成されました(上限500名のため、参加人数は500名ほど)。
そこで、2019年11月頃に、Googleフォームを用いて作成したアンケートをお願いしました。
すると、有難いことに82名の修習生の方からご回答いただきました。

今回は、当時のアンケート内容のうち、

出身大学(在学中合格・中退含む)
②司法試験の勉強開始から合格までにかかった時間数(大学の授業時間等を含む)
③司法試験の勉強を開始してから合格までにかかった年数
④受験指導校による入門・基礎講座の受講の有無

これら4つのアンケート内容の結果をもとに、司法試験の合格に必要な勉強時間・年数について分析しています。

学歴別の【平均】勉強時間・合格年数

(データは小数点第三位を四捨五入)

総計:合格までにかかった平均勉強時間は8720時間、平均年数は5.35年!

はじめに情報の多いグラフで恐縮ですが、まずはグラフの一番右側、アンケートを答えてくださった方の総計部分をご覧ください。

青い棒グラフは、今回のアンケートの回答人数です。
回答人数は、82名になります。

上部のオレンジ色の折れ線グラフは、回答者全員の合格までにかかった平均勉強時間になります。
平均勉強時間は、約8720時間になります。

次に、下部のグレーの折れ線グラフは、回答者全員の合格までにかかった年数になります。
平均年数は、5.35年になります。

出身大学(在学中合格・中退含む)による学歴別:旧帝大+一橋/金岡千広+早慶上智/その他

続いて、グラフの左側3つをご覧ください。

平均勉強時間・年数について、出身大学による学歴別の平均を計算しました。

ここでいう学歴とは、3分割して

  1. 旧帝大(北海道大学・東北大学・東京大学・名古屋大学・京都大学・大阪大学・九州大学)+一橋大学
  2. 金岡千広(金沢大学・岡山大学・千葉大学・広島大学)+早慶上智(早稲田大学・慶応大学・上智大学)
  3. その他

という括りになります。
めちゃくちゃおおざっぱな括りですが、回答人数との関係で3分割するためのバランスを意識したものになります。
なお、法学部か否かは、区別せず一括りにしております。

旧帝大+一橋大学出身者の合格までにかかった平均勉強時間は5895時間、平均年数は3.83年!

一番左のグラフが、旧帝大+一橋大学出身者の回答内容になります。

青い棒グラフは、回答人数です。
回答人数は、24になります。

上部のオレンジ色の折れ線グラフは、合格までにかかった平均勉強時間になります。
平均勉強時間は、約5895時間になります。

次に、下部のグレーの折れ線グラフは、合格までにかかった年数になります。
平均年数は、3.83になります。

回答者全体の平均勉強時間が約8720時間なのに対し、勉強時間3000時間弱も短いことがわかります。
また、合格までにかかった年数も、約1.5年も短いです。

理由としては、最難関大学に入学する学力のある方は、大学入学までに人並み以上に勉強をしているため、自身に適した効率的な勉強方法をすでに会得している可能性が高いです。
また、いわゆる地頭の良さが影響しているのかもしれません。

金岡千広+早慶上智出身者の合格までにかかった平均勉強時間は9522時間、平均年数は6.13年!

左から二番目のグラフが、金岡千広+早慶上智出身者の回答内容になります。

青い棒グラフは、回答人数です。
回答人数は、22になります。

上部のオレンジ色の折れ線グラフは、合格までにかかった平均勉強時間になります。
平均勉強時間は、約9522時間になります。

次に、下部のグレーの折れ線グラフは、合格までにかかった年数になります。
平均年数は、6.13になります。

金岡千広+早慶上智出身者も、いわゆる高学歴ではあります。ですが、この層であっても合格までに約9522時間、平均年数は6.13年と、一般の方々の想像以上に勉強時間や合格年数がかかっている印象を受けます。

平均年数の6.13年というと、大学入学時に司法試験を目指し始め、ストレートで法科大学院に行き、現役か、一浪して司法試験に合格する程度でしょうか。

平均勉強時間を平均年数で割ると、年間の勉強時間は1553時間。1カ月は129時間。

非現実的ではありますが、均すと、休みなしで一日当たり約4.25時間を、6年間続けることで達成できる計算になります。

結構リアルな数字ですね…!

その他出身者の合格までにかかった平均勉強時間は10111時間、平均年数は5.88年!

左から二番目のグラフが、その他出身者の回答内容になります。

青い棒グラフは、回答人数です。
回答人数は、36になります。

上部のオレンジ色の折れ線グラフは、合格までにかかった平均勉強時間になります。
平均勉強時間は、約10111時間になります。

次に、下部のグレーの折れ線グラフは、合格までにかかった年数になります。
平均年数は、5.88になります。

3つの中で一番下のグループで計上していますが、実際は中央大学法学部の方が13名含まれる他、28名がGマーチ+関関同立+東京理科大+国立大学と、世間一般では十分高学歴に含まれます。
それもあってか、平均勉強時間・平均年数は第2グループとほぼ同一。

合格者の多くの方が高学歴であることがわかります。

そうは言っても、司法試験の受験資格は予備試験によって広く開かれており、合格の有無は学歴によって左右されるものではありません。

 

続いて、アンケート結果のうち

②司法試験の勉強開始から合格までにかかった時間数(大学の授業時間等を含む)
③司法試験の勉強を開始してから合格までにかかった年数

について、より詳細に見ていきます。

【82人の全データ】司法試験合格までにかかった勉強時間数

こちらの横棒グラフは、司法試験の勉強開始から合格までにかかった時間数(大学の授業時間等を含む)の統計になります。

アンケートは、
A.~500時間
B.~1000時間
C.……
といった、500時間毎の選択肢を選択していただく形で回答していただきました。

なお、先ほどから平均勉強時間と称していますが、正確には「~〇〇時間」を選択してもらい、その上限である〇〇時間を勉強時間と仮定して計算した勉強時間になります。

こちらの横棒グラフからは、とにかく勉強時間にはばらつきがある、といった印象を受けます。

82人というサンプル数ですが、
最短で500時間(!)から、3000時間~4500時間といった、平均勉強時間の半分以下という超短時間での合格者が19人程度います。
一方で、10000時間以上の合格者が24人います。その中でも、15000時間以上の方は15人と、決して少なくありません。

そのため、平均勉強時間は算出しましたが、「8720時間やれば確実に合格する!」とは断言できません

学歴別の平均勉強時間等を参考に、仮定的に合格までの勉強時間を計画しつつ、答練や模試で適宜実力を把握するのが望ましいです。

【82人の全データ】司法試験合格までにかかった年数

こちらの横棒グラフは、司法試験の勉強を開始してから合格までにかかった年数の統計になります。

アンケートは、

A.~0.5年
B.~1年
C.……

といった、0.5年毎の選択肢を選択していただく形で回答していただきました。

なお、先ほどから平均合格年数と称していますが、正確には「~〇〇年」を選択してもらい、その上限である〇〇年を合格年数と仮定して計算した年数になります。

こちらの横棒グラフからは、4年と6年の前後で合格年数のピークがあることがわかります。
学歴別の平均年数からご察しの通り、前半の波は主として最高学歴層、後半の波はそれ以外の層により形成されています。

一方で、6年を超える勉強年数の方も20人いますし、「6年勉強すれば確実に合格する!」とは断言できません

短期間合格を目指す志は素晴らしいですが、実現するためには人並み以上の覚悟が必要です。

受験指導校による入門・基礎講座の受講歴:あり・なしによる差

受験指導校の基礎講座を利用した場合の平均勉強時間・合格年数は、利用しない場合と比べて変わるのでしょうか。

「受験指導校による入門・基礎講座の受講の有無」というアンケートの結果と、先のアンケート結果を併せて分析しました。

受験指導校の基礎講座の受講歴が【ない】人の合格までにかかった平均勉強時間は8070時間、平均年数は4.44年!

このグラフの見方は、はじめのグラフと同じです。グラフの一番右側は、受講歴がない方の総計部分になります。こちらだけ解説しますね。

棒グラフは、受講歴がない方の回答人数です。
回答人数は、36名になります。

上部の折れ線グラフは、受講歴がない方の合格までにかかった平均勉強時間になります。
平均勉強時間は、8070時間になります。

次に、下部の折れ線グラフは、受講歴がない方の合格までにかかった年数になります。
平均年数は、4.44年になります。

受験指導校の基礎講座の受講歴が【ある】人の合格までにかかった平均勉強時間は9228時間、平均年数は6.07年!

続いて、受講歴がある方のグラフになります。グラフの一番右側である総計部分だけ解説しますね。

棒グラフは、受講歴がある方の回答人数です。
回答人数は、46名になります。

上部の折れ線グラフは、受講歴がある方の合格までにかかった平均勉強時間になります。
平均勉強時間は、9228時間になります。

次に、下部の折れ線グラフは、受講歴がある方の合格までにかかった年数になります。
平均年数は、6.07年になります。

全体として、受験指導校の入門・基礎講座の受講歴がない方の方が、合格までにかかった勉強時間・年数がいずれも短いとの結果になりました。

もっとも、サンプル数がいずれも少ないため、統計上価値のあるとされる「有意差」までは認められません
一応、仮にこれが正しい場合の理由を考えてみます。
そもそも、司法試験の勉強は難易度が高いところ、入門・基礎講座を利用せずに司法試験の勉強ができる方は、難しい勉強がこなせる効率的な勉強方法を身につけていたり、そもそも高い地頭を有している可能性が高いためではないでしょうか。

データを見る際の注意点3つ

以上のデータを参考に、ご自身に適した長期的な勉強計画や勉強方針を立てていただければ幸いです。

もっとも、このデータが「絶対的に正しい」ものであると妄信することは禁物。理由は以下の3点です。

回答情報の正確性に乏しい

アンケート結果は、

勉強開始から合格までにかかった時間数(大学の授業時間等を含む)
・司法試験の勉強を開始してから合格までにかかった年数
・受験指導校による入門・基礎講座の受講の有無

の回答になります。

ですが、そもそも、勉強開始から合格までにかかった勉強時間を正確に計算している人はほとんどいません。そのため、アンケート結果は概算の結果のため、正確性が高いとは言えません。

参考までに、勉強時間の計算式として、以下の例をアンケートに添付していました。

□【1年間の平日は約250日、土日祝日は約120日で計算する場合の例】
学部4年間✖️3時間✖️平日250日(3000時間)、
学部4年間✖️8時間✖️休日110日(3520時間)、
法科大学院2年間✖️6時間✖️平日250日(3000時間)、
法科大学院2年間✖️8時間✖️休日110日(1760時間)、
浪人2年✖️平均5時間✖️365日(3650時間)、
合計14930時間
なので、「〜15000時間」を選択

 

また、今回のアンケート結果は、司法試験の順位を計算に入れていません
合格者1502名にはそれぞれ成績によって順位がついています。そのため、超上位合格者から、ぎりぎりの合格者まで実力は様々なところ、成績を捨象した統計となっています。
そのため、本来一緒くたに勉強時間・年数を計算すべきではないかもしれませn。
ですが、受験生の目標勉強時間を分かりやすく考える便宜上、多少の正確性を犠牲に計算しています。そのため、不完全燃焼なアンケート結果ではありますゆえ、あくまで参考程度にご覧ください。

サンプル数が少ない

司法試験の合格に必要な勉強時間・年数を考える上で、望ましいのは全合格者の1502名に対するアンケートですが、今回のサンプル数は1割に満たない82名です。正直言って、精度がめちゃくちゃ高いわけではありません。

今回のアンケートの総計については、信頼水準90%と考えると、許容誤差9%であり、統計上は90%の確率で平均勉強時間・合格年数の誤差が9%以内に収まるとのこと。つまり、別にアンケートをとった場合に、平均勉強時間が8720時間±872時間、年数が5.35年±0.535年になる確率が90%最低限の信頼性は置けます。

一方で、学歴別や、受験指導校の入門・基礎講座の受講歴の別については、サンプル数がさらに少ないです。そのため、精度は信頼が置ける程度のものではありません

さらに、当然ながら、平均勉強時間以上の勉強をしつつも、残念ながら合格されていない受験生の方もいらっしゃることが想定されます。
そのような方々の統計との対比が本来は望ましいのでしょうが、一方の統計のため、やはり参考程度の情報になります。

個人差が大きい

今回のデータを見る際の注意点としては、個人差が大きいため、必ずしも平均値が参考にはならないことを意識してください。

合格までにかかった勉強時間については、下は500時間、1500時間から上は20000時間強まで、幅広いです。
また、合格年数も、下は1.5年から上は20年と様々です。

結局のところ、合格に必要な勉強時間・年数は人それぞれ
(効率性や継続可能性から見て)最適な勉強方法を身につけているか
地頭の良さ

等に大きく左右されます。

終わりに:変えられるものに目を向けよう

いかがでしたでしょうか。

「司法試験の合格はこんなに大変なのか…!甘く見ていた…」
と思った方もいるかもしれません。

僕もそうでした。勉強を始めた時は、
「質を高めて、人より短い勉強時間で合格するぞ~」なんて意気込んだ受験生活を送っていました。

ですが、量を増やすことから目を背け続け、結果として、合格にかかる期間は7年と、人並み以上にかかってしまいました

この結果を見て、「自分は低学歴だし、地頭も悪いし、勉強を始めたはいいけれど全然理解できないし、受からないのではないか…」と思う方もいるでしょう。

ですが、学歴や地頭が全てではありません。これらは変えられませんが、今から変えられるものがあります

それは、自分にとって最適な、「効率的な学習方法」を身につけること、そして「とにかく勉強時間を増やす」ことです。

「自分は人並み以上に頭は悪いけれど、その分、人の何倍も努力して合格してやる!」

といった意気込みで、努力を積み重ねていきましょう。

僕も、

「人並み以上に司法試験合格に時間がかかったけれど、これからは、人の何倍も努力して良い弁護士になってやる!」と思って、日々勉強しています。

一緒に頑張りましょう!

本ブログでは、過去の自分と同じように司法試験の勉強に苦労している方々に向けて、効率的に勉強するためのコツや、努力を継続するコツを記事にしています。是非ご参考にしてください。

最後になりますが、今回アンケートにご協力してくださった修習生の皆様、本当にありがとうございました!

最後までお読みいただき、ありがとうございます!