司法試験・予備試験の短答式試験に気を抜いて落ちる人、確実に受かる人【1年間で3300位→430位に急上昇した僕の勉強方法】

司法試験・予備試験の登竜門は論文式試験であることは言わずもがな。
ですが、短答式試験に落ちてしまったら、司法試験であれば論文が採点されなかったり、予備試験であれば論文式試験を受けることができない、といったとてもしんどい思いをすることになります。
お恥ずかしい話ですが、僕は予備試験の短答式試験に4回連続で合格しています。ですが、翌年の司法試験の短答式試験に一度落ちています。「予備試験の短答式試験に4回連続で受かっていても、気を抜くと司法試験の短答式試験には落ちる」のです。

そこで今回は、司法試験の短答式試験で3300位(105点)→430位(143点)に急上昇した僕の体験談をもとに、気を抜いて落ちる人の勉強方法、確実に受かる人の勉強方法をそれぞれ3つずつ紹介します。

はじめに:短答式試験対策は、何をすればいいの?

短答式試験対策で用いるべき教材は、司法試験・予備試験の過去問題集(以下、「過去問」と呼びます)です。それ以外に手を広げる必要はありません。理由は、多くの受験生が過去問対策に終始しているためです(もっとも、後述する通り、手持ちの基本書や判例六法等を併せて用いた学習をすることとなります)。

また、初学者であっても、過去問にいきなり取り組むことを推奨します。

一方で、過去問は一つの肢ごとの文量が初学者には長く感じます。また、意義を覚えていない法律用語が多く出てくると、難しいと感じるかもしれません。
その場合は、比較的文章が短い、簡単な市販の一問一答式の問題集を用いても良いでしょう。
その際の注意点としては、一定程度は本試験の問題と同じ形式の問題を解き、形式に慣れる練習をすることが必要です。

それでは、以下で過去問を用いた勉強方法のうち、落ちる人がやりがちな勉強方法と、確実に受かる人の勉強方法を紹介します。

気を抜いて落ちる人の勉強方法

①正答率の低い問題を解かない

正答率の高い問題に絞って問題を解く勉強方法があります。ですが、これは推奨できません。正答率に関係なく、全ての問題を解くべきです。
僕は司法試験の短答式試験に一度落ちていますが、その主たる原因は「正答率の低い問題を解かなかった」ためと分析しています。

本試験の問題は、「正答率が60~70パーセント以上の問題をすべて解ければ合格する」と言われます。これは統計上明らかでしょう。
ですが、だからといって過去問を解く際にも正答率が高い問題のみを解けば、本番でも必ず合格する、とは言えません
なぜなら、確実に合格する受験生は過去問を全て解くのが通常であるため、「過去に出た正答率の低い問題」であっても、その問題を解いています。多くの受験生は、正答率の低い問題について、過去問演習では間違えるでしょう。そして、解説を読んで「なるほどなぁ!」と深く理解して記憶するはず。
そのため、出題年に正答率が低い問題であったとしても、来年以降は「正答率の高い問題」になるのです。

正答率に関係なく、全ての問題を解くことを徹底しましょう。

②全ての選択肢を解かない

やりがちなのが、過去問の一つの問いに対し、消去法(以下で説明します)を用いて解くことで、全ての肢を検討しない勉強方法です。
これも推奨できません。必ず、過去問を解く際には消去法を用いず、全ての肢を解きましょう

過去問の一つの問いには、「ア.からオ.までの5つの肢」があり、「正しい(誤っている)肢の組み合わせ」を選択する形式の問題が多いです。
ここで、例えばア.の肢が自信をもって正しい(誤っている)と考えたとします。すると、選択肢にア.を含む肢が「2(ア、ウ)」と「3(ア、オ)」しかなければ、後はウ.とオ.の肢だけを検討すれば、解答を選択することができます。これが、消去法を用いた解法です。

消去法は、時間制限がある本試験では有益なテクニックです。ですが、普段の学習においては用いるべきではありません。理由は、消去した他の肢を用いた学習ができなくなるためです。消去した他の肢の知識が重要である場合もあります。その知識について考え抜き、答える勉強をする機会が失われるのを防ぐため、本試験と異なる過去問では必ず全ての肢を解きましょう。

③スピード対策(時間制限の対策)をしない

本試験は、時間制限が意外と厳しいです。例えば、司法試験の最終日。疲労困憊の受験生を最後に迎え撃つのは、めちゃくちゃ時間制限の厳しい刑法の短答式試験です。そのため、「時間切れで全ての問題を検討できなかった…」と受験帰りに嘆く受験生は多いのです。
せっかく解けるはずの問題が、時間切れで解けないのでは、とてももったいないですよね。
したがいまして、本試験にむけてスピード対策をすることが欠かせません。
スピード対策としては、大きく3つあります。

①本試験では一問あたり何分ペースで解くべきかを計算して、その時間内で解く練習をする
一年分の過去問を用意して、時間を計って解く
答練・模試を利用する

これらは、いずれも普段の過去問学習とは解くペースが異なります。普段の過去問を用いた学習とは別に、スピード対策を必ずしましょう。

また、スピード対策をすると、マークミスや読み間違いといったケアレスミスをする可能性が高まります。これらのミスを軽視することなく、どうしたらケアレスミスをしないで解けるか、自分なりのルールをまとめておくのが大切です。

ケアレスミス対策として、僕は、

①マークミスをしないよう、一問ずつマークでなく、見開き1頁解いたらまとめてマークをし、マークシートの番号に対応しているかその都度確認する
②「正しいものの組み合わせ」が問われていれば、すぐその上に大きく〇印をつける(「誤っているもの」であれば×印をつける)

といった対策を、マイルールとしていました。試してみてよかったら、ぜひ参考にしてください。

確実に受かる人の勉強方法

ではお待ちかね、確実に合格する人の勉強方法3つです!

①徹底的に考え抜く

過去問の一つ一つの肢を、徹底的に考え抜きます。

本試験では、必ず未知の問題が出ます。その際に、知識がないから諦めてはいけません。未知の問題を考え抜き、説得的な結論を導く訓練をしていれば、本試験で未知の問題を正解することができるようになります。

また、問題演習で徹底的に考え抜くことは、知識の記憶定着にも役立ちます。
徹底的に考え抜いて、間違えれば、「間違えた、恥ずかしい!」「え、なんで!?」と感情が大きく動きます。すると、記憶の定着が捗るのです。

ちなみに、僕の受験指導をしてくださったゼミ長の方は、
「一つ一つの肢を解く際に、『命懸けて〇だ!』という位の覚悟を持って解きましょう」
とおっしゃっていました。
みなさんもぜひ、命を懸けられるくらいの覚悟を持って、徹底的に考え抜いてみてください。笑

徹底的に考え抜く方法について具体的にお話します。
まず、肢が○であると考えられる理由×であると考えられる理由の両方を、条文や法制度の趣旨から考え抜きます。続いて、双方の理由を比較して、より説得的と考える肢を、その理由と共に選択します。

「よくわからないけど常識的に考えてなんとなく〇」
テキストに書いてあった(気がする)から×」
結論だけ覚えているから理由は分からないけれど〇」
「別の肢が×っぽいからこっちは〇だろう」

これらはいずれも考え抜いたとは言えません。一つ一つの肢を、理由付きで自分なりに自信を持って解答します。これが、徹底的に考え抜く方法です。
今まで十分に考え抜けてなかったと自覚した方は、ぜひ参考にしてみてください。おそらく、一問にかかる時間が倍増するはず。短答過去問対策は、意外と時間がかかるものなのです。

なお、「考え抜く」方法については、過去記事で詳細に解説しています。こちらもぜひご参照ください。

②偶然合ってた、間違えた理由を徹底的に分析する

考え抜いても、完璧に自信を持ってすべての肢が解けるとは限りません。特に初学者のうちは、考え抜いても分からない問題の方が多いでしょう。
結果、偶然合っていた、あるいは間違えることがあります。
その際に大切なことは、偶然合っていた、間違えた理由を徹底的に分析することです。

具体的には、なぜ解答の理屈に考えが至らなかったのかを考えます。
すると、

条文や制度の理解が不十分で、趣旨から考えられていなかった
・問題文の具体的場面が思い浮かべられなかった
・問題文中の法律用語の意味が分からず、問題文の理解が不十分だった
・結論と一応の理由は思い至ったが、説得的でないと考えた

といった理由が必ずあります。これらの理由にたどり着くまで、徹底的に分析します。

 

また、解答の理解が難しかったり、問題文中の法律用語具体的場面の理解が不十分だった場合には、必ずその場で基本書や判例六法等を参考に十分に理解を深めましょう
偶然合っていた、間違えた理由を徹底的に分析することで、解答の理屈を深く理解し、感動することができます。感動することで、記憶が定着しやすくなります
また、繰り返しになりますが、徹底的に考え抜いて間違えた際には、「恥ずかしい!」「え、なんで!?」感情が大きく動いており、これもまた記憶定着のチャンスです。解答の理屈やその周辺の基礎知識の理解を深めて、知識を定着させましょう。

そして、プラスアルファのお話。
次回以降どうすれば、この問題や同種の問題において解答の理屈に考えが至るのか」を考え、自分なりにメモにしてまとめてみてください。すると、自分の考え抜く力を養うこともでき、おススメです。

ちなみに最悪な勉強方法は、解答を見て「答えを暗記しよう」と考える暗記偏重の学習です。
これでは合格に必要な考え抜く力が身につきません。また、丸暗記は知識が抜け落ちやすいため非効率的です。

③本番にピークを持っていく準備をする

本番当日にピークを持っていく必要があるのは当然のこと。一カ月前には頭が冴え、知識も定着していたけれど、本番では抜けていた…では意味がありません。

ピークを持っていくべき能力を細分化すると、大きく以下の3つ、

①未知の問題を考え抜く力
基礎知識の理解と記憶
③短答を正確に解くスピード力

が挙げられます。

これらを本番当日にピークを持っていくために僕がやっていたことは、

偶然合っていた、間違っていた問題の肢にチェック✔印をつけておき、本番前に考え抜きながら解く
学んだ知識や考え方を、教材(基本書・判例六法等)に書き込んだり、図表にしたりしつつ、メモしておき、本番前に見返す
ケアレスミスをしない自分なりのルールをメモしておき、本番前に見返す
④見返すべき教材やメモは可能な限り一元化しておく(僕は、過去問・メモ帳・判例六法に三元化していました)

です。皆さんも自分なりのピーキングの工夫があるでしょう。よかったら参考にしてみてください。

終わりに:短答式試験を甘く見る人=論文式試験に意識が向きすぎてしまう人

以上、気を抜いて落ちる人にありがちな勉強方法と、確実に受かる人の勉強方法を3つずつ紹介しました。いずれの勉強方法も受験者の話を聞いたり、僕自身の体験談が元となっています。

短答式試験を甘く見てはいけない。甘く見ると後悔します」というのは当たり前のこと。ですが、受験歴が長くなればなるほど、「甘く見る」ようになりがちなのです。

僕の短答式試験の受験歴を簡単にお話しすると、

1年目:勉強開始から半年で予備試験の短答式試験を受験。20点以上足りずに不合格。
2年目:短答中心の勉強をしていたため(当時、完璧主義の論文嫌いという悪い勉強方法の典型でした)、予備試験の短答式試験に合格。
3年目:合格点を20点以上上回り予備試験の短答式試験に合格。
4年目:法科大学院入学。ローの勉強メインで、さほど勉強しないも予備試験の短答式試験に合格。
5年目:さほど勉強せず予備試験の短答式試験に合格(なお、この年はストレスで論文式試験の受験会場に行けなくなった)。予備試験に比べて科目数の少ない司法試験の短答式試験を甘く見はじめる
6年目:司法試験の短答式試験の足切りにあう(108点で合格のところ、105点)
7年目:司法試験の短答式試験に合格(108点で合格のところ、143点)

といった経歴です。
繰り返しになりますが、「予備試験の短答式試験に4回連続で受かっていても、甘く見ると司法試験の短答式試験には落ちる」のです。

また、司法試験の短答式試験に複数回受かっていても、その後司法試験の短答式試験に不合格となってしまった話もよく聞きます。

なぜ「甘く見てしまう」のでしょうか。それは、論文式試験対策に意識が向きすぎてしまうためです。

司法試験・予備試験の登竜門は論文式試験です。ですが、論文に意識が向き過ぎてしまうと、短答式試験に足をすくわれてしまいます。
はじめて受ける方はもちろん、短答式試験に合格経験のある方であっても、毎年、短答式試験対策に時間をかけて確実に受かる勉強をしましょう

精一杯対策して落ちるのは実力不足と結果を受け止められるかもしれません。ですが、論文対策にかまけて短答式試験に落ちた、となると、とても悔しい思いをします。どれだけ悔しい思いをするかは、過去記事で詳述しておりますので、ぜひ反面教師にしてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!